過去20年間で、科学的アプローチで主観データの測定や分析を行なうことにより、幸福についてさまざまなことがわかってきました。
幸福になるためには、小さな出来事の積み重ねが大切であり、インパクトの大きな出来事は長期的にはそれほど影響を及ぼさないこと。職場でも「挑戦しがいのある目標を与えた方が幸福は最大化する」ことが確認されています。
では、幸福度を高めるためにできる小さな出来事とは、どんなものでしょうか。
これら、幸福の秘訣に関する科学的な研究を一言で要約するなら、それは「社会性」、すなわち「つながり」とその絆の強さです。
これは、職場における幸福もまた、高い給料や肩書などの固定的な要素よりも、一瞬ごとの幸福「EX」、たとえば、同僚とのいつもの会話、携わっているプロジェクト、日々の貢献などによって大きく左右される可能性があることを示唆しています。
私たちはESという視点から組織づくりを推進して10年以上研究と実践を積み重ねてきていますが、ES=職場を幸福度とした場合、幸福と生産性の相関はどんな関係なのでしょうか。
「幸福優位の7つの法則」の著者、グッド・シンク創業者兼CEOショーン・エイカーをはじめとする、225件の研究について分析を試みたところ、「幸福感とパフォーマンスの関係」について、幸福感の高い社員は顧客から高い評価を得る可能性が高い。さらに、幸福感の高い社員の生産性は平均で31%、売上は37%、創造性は3倍高いという結果となりました。これは、企業の場合、従業員が幸福であることは利益も高いことを意味します。
また、その中で得られた知の一つによれば、多くの人が信じている「成功すると幸福になれる」は誤解であり、「幸福を感じていると成功確率が高まる」=「幸福優位」が正解であるといいます。
では、どのように社員の幸福感を高めていくのか。先に述べた幸福研究、幸福の心理学によれば、幸福の秘訣は「社会性」であるとしています。
人は、仕事を通して仲間、お客様、地域と関わりながら、自分の成長や喜び、ワクワク感などに焦点を当てたつながりや、社会に貢献したいという人間性の根幹に基づく経営が今、注目を集めているのです。
私たちは、地域に愛され、社員が輝く、オープンな組織を実現し、他業界の会社や地域、大学との新しいつながりを通して、イノベーションを起こし、持続的な成長を促進している多くの企業をみてきました。
弊社の顧問先には、CSR(社会貢献企業)を目指す会社が多くみられます。それは私たちがCSR企業の人事制度構築や組織開発をしているときが一番幸せでもあるのですが、その会社の貢献意識の力が業界のみならず地域を活性化し、企業基点で元気になっていくことによりその企業が、社員からも地域からも愛される企業になっていく姿は素晴らしいの一言につきます。
時代は自前主義から他社とのアライアンスです。いままでにない価値の高い商品、サービスを素早く市場に投入した企業が市場を作っていく時代です。AppleやUBER、Airbnb と工場を持たない企業、タクシー会社なのにタクシーをもたない会社が新しいビジネスモデルとして急速に伸びているのです。
多くの会社が新しい価値を生むためにオープンイノベーションに向けて動き出していますがなかなかうまくいかないようです。
私はこの自前主義からオープンイノベ―ションへの動きは図のように組織の成長段階と連動するものと思っています。
図は後述しますソシオグラムの組織状態を成長段階によりステージごとに分類したものです。上のレベルにいけばいくほど組織内でのつながりや、他社とつながっていきます。
私達の経験値からするとCSR企業といわれる社員そして地域に愛される企業はステージ4、5の会社が多数占めています。日本の企業はステージ3の会社が多いのですがそれは高度成長期からバブル時代まで右肩上がりのトップダウン型のステージ3の企業が効率よい組織の状態としてある種高い生産性をあげていたいからです。
大量かつ質の良いものを安く、早く、あるべき姿に向かってつくっていく。そこにはゴールが決まっていてトップダウンで進んでいく組織はとても効率が良かったわけですね。しかし、その時代は終わり、冒頭に述べたように顧客に寄り添った現場主義の会社は、ステージ4以上です。そしてこのステージ4以上の企業は組織の情報共有が進みつながりがある程度深まった企業が、さらによりよい社会に必要なものを作りたい、会社の存在意義と自分の存在感重ね合わせた「私たち」という考えが深まり文化として生まれてくるにつれて、自分たちだけでは新しい価値を生み出すことは出来ない。さらに外部との連携を深めて新たな価値を作ろうとするときに、外的指標が高まってくるのではないのでしょうか?
つまり、組織が成長するにつれて、結果、CSR企業となっていたというのが事実のようです。
先ほどの成長段階を上げていくためには何をすれば良いのでしょうか?
私達は、3つのステップがあると考えています。
まず最初のステップは、組織の見える化です。
私たちは、社員が自分ごととして働く幸せな職場を目指すための5つの重要な指標、ハピネス5というものを提案しています。
幸せな職場を目指すために重要な5つの指標、”リーダーシップ”、”コミュニケーション”、”マインド”、”組織のES”、”組織のSQ”、で構成されています。「ハピネス5」の指標があることで会社・組織は成り立っていると考えられ、それぞれのバランスを保つことが重要です。これらの指標をAI・ICTの技術により算出します。「ハピネス5」を社内共通のダッシュボード化することにより課題抽出と改善のPDCAサイクルを速めることができ、危機に対する予見や準備、リスク管理はもちろん、企業が健全な組織運営を行なうための包括的なツールとして便利なものとなるでしょう。
次のステップは、ビジョン、クレドの共有と役割の明確化です。組織状態が見えるようになったことで、問題点がわかりましたがこれだけでは社員に役割を与えただけで自律的に動けるようにはなりません。自律的に動くためには、それぞれの社員がリーダーのようにふるまえるようにならなければなりません。
最後のステップとして、自律分散型組織を動かす為のチーム運営や意思決定があります。車内が自律的に動けるようになると、社外とのオープンイノベーションに挑戦する段階になるのですがそのためには効率的な管理が必要になります。なぜならば、管理する対象が広がるためです。
野中郁次郎氏の『MBB:「思い」のマネジメント』で述べられているように、左脳だけでは近年の経営では、限界がきています。右脳の部分との両利きの経営が大切だと野中氏は述べています。
5年・10年先も持続可能な成長企業であり続けるためには、年率成長という左脳の目標と右脳の目標、組織の感情・意思あってこそ、左脳の数字、業績へとつながっていきます。そのバランスの上で成り立ちます。この右脳の部分の状態を見える化し、常に経営陣と社員がモニタリングして、組織の健康状態について語り合うことにより、年率成長も可能になる。また、年率を大きく伸ばしていきたいのなら、自前主義の経営では難しい時代です。他社と協働し市場を長い目で作り上げていく、そんなオープンイノベーションの取り組みが必要です。
その為には、組織の自社のつながりを強くする。そして、その延長線上で他者とつながっていていくのです。その過程で地域貢献的な活動や他業種との交流が生まれたりと、外に向けた取り組みが生まれてくるのです。
昨今のデジタルツールや統計手法を使ってつながりの科学的分析ができるようになりました。今まで経験と勘で決めていた人事を科学的な視点を取り入れることにより新たな人事での問題解決へと着手することが出来るようになったのです。
情報の見える化、組織の感情の見える化を定量化することにより情報の共有をハピネス5指数でまず初めの一歩へ組織開発を行っていきます。
そして、Teal組織という新しい組織の段階や、大人の発達という理論をどのように組織に取り入れていくかの提案をさせて頂きました。ぜひ、お金のマネジメントから組織の感情・つながりのマネジメントの指標を皆さんの会社にも取り入れて頂けたら幸いです。
「努力して成功するから幸福になるのでなく、幸福だからこそ努力して成功する」という幸福優位論の哲学を私は持っています。
そして、このような自律分散型組織を取り入れる会社が増えることは、ES=人間性尊重経営を重視した「社員に愛され地域に愛される企業」が増え、地域が、日本が、“はたらく”を通して笑顔溢れる社会になることにつながることだと思います。
「社員手帳」とは経営理念やクレド、社内ルールなど会社の思いを浸透させるツールです。大企業はもちろん中小優良企業でも導入されています。
新春グレードアップ版として、A5版の革製社員手帳と自身でカスタマイズできるリフィルデータを収録したCD-ROMをセットで販売いたします。