
サービス残業や長時間労働、過労死などの労働問題が、社会問題化し、労働基準監督署による是正勧告が増えてきています。是正勧告とは、労働基準監督署が事業所(会社)に調査を行い、その結果、法違反や改善事項があった場合に行われる勧告(指導)のことをいいます。
労働者を使用する事業所(会社)は、労働基準法をはじめ労働に関する諸法令を遵守する義務があります。労働基準監督署は、事業所(会社)がそれらの法律を遵守しているかどうかの調査をする権限を持っています。通常、調査は「定期監査」と「申告監査」と「再監査」の3つに分かれます。
「定期監査」とは、労働局が作成した計画にもとづいて、労働基準監督署が受け持ちの地域から事業所(会社)を選び、監査を行います。通常、出頭要求書が事業所(会社)に届き、労務管理に関する書類を持って、労働基準監督署へ出頭することを要請されます。
これに対し、「申告監査」とは、従業員や退職者などが労働基準監督署に法違反等の申告(いわゆる「かけこみ」)を行うことで、労働基準監督署が行う監査のことを言います。来署通知書(※1)が事前に事業所(会社)に届くこともありますし、何の連絡もなく事業所(会社)に来る場合もあります。
「再監査」は、是正勧告や是正指導を行っても、報告のない事業所(会社)や、違反行為を繰り返している事業所(会社)に対して行われる監査です。労災事故が頻繁におこる事業所(会社)などに対して、定期的に行われることもあります。 |

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( ※1) 来署通知書
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是正勧告とは、どのようなことを指摘されるのでしょうか?
平成14年度の監督業務実施状況(厚生労働省労働基準局−統計資料)によると定期監査における指摘事項のワースト5は以下のとおりです。
ワースト |
指摘事項 |
1位 |
法定労働時間を超えた労働をしている |
2位 |
就業規則を届け出ていない(作成していない) |
3位 |
残業等による割増賃金を支払っていない |
4位 |
労働条件の明示を行っていない |
5位 |
賃金台帳に労働時間が明記されていない |
番外(1) |
産業医・衛生管理者が選任されていない |
番外(2) |
健康診断が行われていない |
ワースト1位は、労働時間に関する違反です。
労働基準法では、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えた労働は違法とされています。しかし、36協定(※2)を締結している場合はその協定の範囲内で法定労働時間を超えた労働も可能となります。つまり、36協定を締結せずに法定労働時間を超えて労働させていたり、36協定の範囲を超えて労働させていた場合、是正勧告の対象となります。
ワースト2位は就業規則に関する違反です。
労働基準法では、正社員、パート、アルバイトを問わず10人以上の労働者を使用する事業所(会社)は、就業規則を労働基準監督署に届け出なければならないことになっています。つまり、そもそも就業規則を作成していなかったり、作成していても届け出ていない場合、是正勧告の対象となります。さらに、労働条件を定めたものが就業規則ですから、就業規則の内容に違法な事項があれば、それも是正勧告の対象とされることもあります。
ワースト3位は割増賃金に関する違反です。
労働基準法では、法定労働時間を超えて労働をさせた場合に2割5分増しの賃金を支払わなければなりません。また、法定休日に労働させた場合は3割5分増し、深夜(22時〜5時)に労働させた場合は2割5分増しの賃金を支払わなくてはなりません。このように割増賃金を支払っていない場合は、最長で2年間遡って支払いを命じられることもあります。その結果、中小企業であっても何百万もの支払い義務を負うこともあります。
ワースト4位は、労働条件の明示に関する違反です。
労働基準法では、労働契約を締結する際に、労働条件を明示しなければならにことになっています。労働条件に関しては、原則として、口頭または書面で明示すればよいことになっていますが、労働契約の期間や就業の場所、賃金など書面の交付によらなければならないことになっています。したがって、雇い入れ時に書面で通知していない場合、是正勧告の対象となります。
ワースト5位は、賃金台帳に関する違反です。
労働基準法では、賃金台帳を作成するとき、労働日数、労働時間、時間外労働、休日労働、深夜労働の時間数を記入しなければならないことになっています。
以上がワースト5ですが、番外の2つは、最近特に指摘が多い事項です。
番外(1)は、安全衛生管理体制に関する違反です。
労働安全衛生法において、50人以上の労働者がいる事業所(会社)では、衛生管理者および産業医を選任しなければなりません。また、選任された衛生管理者および産業医について、労働基準監督署に届け出なければなりません。
番外(2)は、健康診断に関する違反です。
労働安全衛生法において、雇い入れ時と定期に健康診断を行わなければないことになっています。さらに、50人以上の労働者がいる事業所(会社)では、健康診断の結果を労働基準監督署に届け出なければならないことになっています。
これら番外の2つの指摘が増えていることの背景には、長時間労働による健康障害(うつ病や自殺、くも膜下出血、高血圧性脳出血など)が多発していることがあるといわれています。
実際の是正勧告で長時間労働を指摘された場合必ず「過重労働による健康障害について」(※3)という書面が渡されます。長時間労働と健康障害の因果関係が医学的に証明され、長時間労働による健康障害が労災として認定されるようになりました。そのため、長時間労働させている場合には産業医等に相談し、必要に応じて健康診断を受診させたり、産業医等による助言指導を受けなければならなくなりました。
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(1) 書類を偽造したり、うそをつかない。
書類を偽造したり、うそをついても、相手はプロですので見破られてしまいます。さらに、労働基準監督官には司法警察権が認められているので、不誠実な対応をして、悪質だと判断されれば、逮捕され送検される可能性もあります。
是正勧告を受けたと言っても、すぐに逮捕されるわけではありません。きちんと対応すれば、それ以上大きな問題に発展することはありません。
(2) 明記された是正期日を無視しない。
是正勧告書(※4)を受けると、必ず、是正期日が記入されます。是正期日とは、「その日までに改善しなさい」ということです。
できるだけその期日内に改善するのが最も望ましいのですが、その期日までにできないのならば、期日を延長してもらうことができます。
ただし、いくらその期日までに間に合わないからと言って、その期日までに何も報告をしないのは問題です。必ず、期日前に間に合わないことを伝え、新たな期日を約束する必要があります。
また、最近、是正勧告書と一緒に渡される「過重労働による健康障害について」(※3)にも、報告の期日がありますので、ご注意ください。
(3) その場限りのことは言わない(できないことは言わない)。
労働基準監督官の印象をよくしようとして、その場限りで、実現不可能なことを言うことも避けたほうがよいでしょう。是正勧告に対しては、是正報告書(※5)を提出することになっています。
この是正報告書には、是正した証拠資料を添付することになっています。できもしないことを言って後から、「できませんでした」では労働基準監督官からの信頼を失います。正直に「できないものはできない」と言い、時間をかけてでも改善していけばよいのです。
(4) 勧告内容を疑ってみる。
是正勧告というものは、労働基準監督官が調査の結果、法違反があると判断した場合に行われる勧告のことです。調査において、監督官は限られた時間の中で判断をするので、誤解をしていることもありえます。勧告は勧告と受け取っておいて、後日、その勧告内容が本当に法律に抵触しているのかチェックすることも必要です。また、是正勧告は、指示や命令ではなくあくまでも勧告なので、是正勧告には強制力があるわけではありません。ある判例によると「勧告を受けた使用者が自主的に勧告に従った是正をするのを期待するものに過ぎない」とされています。是正勧告をうけても、鵜呑みにすることなく、どこがどう違反しているのか、どうすれば法律をクリアーできるのか冷静に考えてみる必要があります。
(5) 感情的になって言い争いをしない。
時々、「労働基準監督官を追い返してやった」という社長さんの武勇伝を聞くことがあります。真偽のほどは別として、あまりおすすめできることではありません。
確かに、労働基準監督官に調査する権限が認められているといっても、調査される側が立ち入りを拒否した場合に、それを無視して力ずくで立ち入ることができるところまでその権限が認められているわけではありません。しかし、拒否をした場合には、罰金刑も科されることもあります。労働基準監督官の調査は法律に基づいた行為であり、調査をやめさせることはできないので、必ず、再調査にやって来ます。見解の相違を主張したり、自社の立場を主張することは、一向に構いませんが、労働基準監督官を怒らせて得することは、一つもありません。あくまでも、冷静に対処すべきです。
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それでは、是正勧告書を受け取ったら、どのように対処すればよいのでしょうか?
ある企業の事例に基づいて説明します。
平成○年1月 |
労働基準監督署の定期監査が入る
是正勧告書を受け取る |
同年2月 |
1回目の報告 36協定の提出
監督署へ状況説明に行く
是正スケジュールの変更を依頼する |
同年3月 |
2回目の報告 労働条件通知書の作成・提出
3回目の報告 時間外手当の遡及払い額・方法の確認
就業規則の提出 |
同年4月 |
時間外手当の遡及払いの実施
就業規則の説明会の実施
4回目の報告 時間外手当の遡及支払い完了の報告 |
以上のように、労働基準監督署との折衝と従業員への説明の両方を同時に行わなければなりません。また、いくらスケジュールを変更できるといっても半年が限度だと思います。無為に時間を過ごすことなく、確実に改善を進めていく必要があります。
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有限会社人事・労務では、労働基準監督署の是正勧告に対して以下のサービスを行っています。
(1) 労務監査への立会い
労務監査でもっとも理想的なのは、是正勧告書を受け取らないことです。違法行為があれば、受け取らないわけにはいきませんが、専門家が立ち会うことで、違法とまでは言えないようなことに関しては、反論や弁解を行います。その結果、会社に不利な状況にならないようにします。
また、労務監査の時点から専門家が立会っていれば、労働基準監督官の信頼感も違います。同じ勧告を受けるにしても、スムーズに進みます。
(2) 是正勧告に対する対応策の検討
是正勧告を受けた後でご相談を受けることも可能です。その場合、勧告書の内容によっては、当方から改めて労働基準監督官に会いに行き、指摘内容の確認を行うこともあります。すぐにできることと時間をかけて解決すべきことを明確にし、実現可能なスケジュールを立てることができます。
(3) 労働基準監督署との折衝
過去10年に渡り、是正勧告の解決の実績があるので、解決へのノウハウを提供することができます。指摘内容の反論やスケジュールの調整など御社にとって有利になるように交渉を行います。
(4) 従業員への説明会の資料作成とアドバイス
監督署との折衝だけでなく、従業員への説明がもっとも重要です。特に賃金に関する変更は、今後、そのルールに従っていかなければなりません。場合によっては、従業員の不利になるようなお願いもしなければなりません。そのような場合の手順や手法を提供します。
(5) 労働基準監督署への報告書の作成と提出
是正勧告は、改善報告をしないと終わったことになりません。また、改善した証拠を資料として添付します。どのように報告すればよいのか、豊富な経験の上、アドバイスを行います。
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