生き物である人間の集合体である組織も生き物、生命体としての組織、などと言われることもありますが、そのように動的存在でありながら、制度の枠組みをつくりルールで管理する、という固定的なシステムで組織運営をはかろう、という時点で、さまざまなひずみが生じるわけです。
制度やルールを失くそう、ということではなく、真に組織として大切なあり方・源に立ち還りながら、社会の変化にも柔軟に対応していく動的な組織をつくりあげる必要があります。それが、わたしたちが考えるWell-Beingな職場のあり方です。
・主体的に働き方を描く(人間性尊重のES組織づくり)
・学び続け変容していく(学びの場づくり)
・多様性を享受しつつも源を大切にする(理念・クレドの浸透)
・線の引き方を現場主体で考える(制度・ルールの運用)
・地域の健全性を高める(事業と活動の両輪をまわす)
組織を集団として捉え管理していくこれまでの人事のあり方ではなく、ES(人間性尊重)を軸とし協働・創発を促すような組織運営のあり方が求められるのです。
「ES組織開発」とは
企業が直面する問題の多様化、ビジネスモデルの変化、そして働く個々の価値観や抱える事情の多様化もあり、日本も含めて世界中で同時多発的に「ピラミッド型組織」ではない新たな組織のあり方が模索され、実践されつつあるのが、今の時期であると言えます。これからの新しい組織の概念を取り入れた企業は、1 人ひとりの個性や考え方が尊重され自由に働きながらも組織としてイノベーションを起こし続けています。このような新しい組織のあり方を、私たちは「コミュニティ経営」と呼び、ESを軸に持続的な経営を実践しようとする中小企業にこそ、必要なあり方であると考えています。
中小企業におけるコミュニティ経営とは、「ES(人間性尊重)の考えを柱に、コミュニティ型の組織構造のもと、しなやかに事業運営していくこと」を指します。そのためには、組織も働く個々も発達段階を高めながら、社会性と開放性をもって、地域・他社・他者とのつながりを大切に働いていくことが求められます。
コミュニティ経営を実践するためには、組織が生命体として、「管理・統制型」→「協働」→「創発」を起こす状態へと変容していく必要があります。
(引用:ボブ・スティルガー「Two Loops モデル」を踏まえ弊社が編集)
「Two Loops モデル」とは、生命論的な組織の捉え方です。自然界での春・夏・秋・冬という四季の中で、植物は芽が出て花が咲き、葉が茂り、実がなり、落葉し、幹や根で全体を支え、と栄枯盛衰を巡っていくのと同様に、職場やチームが形成され時間と共にパフォーマンスが高まっていきますが、その時期がずっと続くわけではなく、社会状況の変化や時間の経過と共にいずれはそれまでと同様の繁栄を示せなくなる時期がやってきます。その時、そこには「再び繁栄をできるようにこれまでのやりかたを何とか守り抜きたい」という力と「この流れに身を任せて枯れてゆくしかない」という力が作用し、組織が栄枯盛衰をたどっていく流れに対するせめぎ合いが生じることになります。その作用の中で、土壌に埋もれた種が芽吹くかのように「このまま枯れ行くのではなく、新たな力を高めていきたい」というイノベーター的な動きがうごめき出してきます。それらがつながり合い、新たな四季の巡りがそこからまた始まってゆく、というのが、Two Loops モデルに基づいた組織の変容段階の考えです。
わたしたちは、これまで関わりを持たせていただいた多くの中小企業やそこで働く人たちのありようを踏まえて、この栄枯盛衰のめぐりには、三段階あり、らせん階段のように変容していくと捉えています。
「統制」は、組織運営として、個々の役割や行動を管理し統制をはかることを重視する段階。「協働」は、個々の自律性や社会性の高まりと共に現場主体で価値創出や課題解決が為されていく段階。「創発」は、関係性が組織の外に開かれることで、社外人材の活用や社内起業の動きも起こりコミュニティとしての価値創出や課題解決が為されていく段階です。
これらの組織の段階を踏まえた施策を企画・実行していくことが、「ES組織開発」と呼ばれるもので、おさえておきたいことは二点あります。
@組織の状態を把握し、かじとりをしていくこと
共同体的組織としての性質が強まっているならば秩序化を進め機能体的組織へとかじとりをする。機能体的組織としての性質が強まっているならばコミュニティ化を進め共同体的組織へとかじとりをする。どちらかの状態が望ましい、ということではなく、いずれの状態をも回転させていくことが重要、ということです。そのかじとりのタイミングを見極めるためには、リアルタイムで組織の状態を把握することが求められ、その時に「サーベイフィードバック」の重要性が増すわけです。
A対話を大切にすること
これは、いずれの施策においても軸となるものです。組織に生じている問題・課題に関し、対話が全てを解決するわけではありませんが、対話することを通して異なりが明確になったり、新たな視点や視座がもたらされ視野が広がることで、それまでは見えなかった問題に気付いたり課題を見出すことができます。
わたしたちは、現象学におけるやりかた(本質観取)を取り入れて、さまざまな場面・局面における対話の場づくりを展開しています。
本質観取をグループワークで行なうときの一般的なやり方
- @問題意識を出し合う
- A体験や用例を出し合う
- B共通性の抽出、カテゴリー分け
- Cの関連づけと根拠の考察
- Dマトメの文章(本質記述)の作成
- E最初の問題意識への応答
(『現象学とは何か』竹田青嗣、西研「総論A本質観取をどのように行うか」より抜粋)
例えば、ESクレド導入のプログラムは、この本質観取の手順を踏まえプロジェクトメンバーでの対話を通してクレドを創りあげていくプロセスであると言えます。企業同士が組織の枠を越えて連携したり、多様な顔ぶれが集まったプロジェクトを動かしていくためには、本質観取のやり方に沿って共通了解をとりながら(合意形成)、物事を動かしていくプロセスが必要となります。