評価制度を運用している会社にとって、多くの会社が悩まれることが評価者の「評価の基準」が統一できないことです。具体的には、評価者によって評価の基準が異なり、同じ行動に対する評価も個人の考え方や特性などにより「甘辛」が生じて、公正な評価が達成できないといったことです。
その評価者同士の「評価の基準」を合わせるために考課者訓練を行います。
この考課者訓練は、単に評価の付け方や面談のしかたなど、評価制度にあたり、ノウハウや心構えといった、しくみやツールの運用における問題を解決するだけでは部分最適にしかなりません。
評価者同士で、なぜ「その行動に対してこの点数を付けるのか」といったことを話し合い、対話を通して会社の理念や文化に合っている行動や会社にとって評価すべき人物像を確認し合うことが大切です。
また、このような対話を通して全体的視野をもち、人事システムをより良くしていくために何が課題なのかを具体的に考え、学び、対話していくことで、評価者(上司)を中心として、会社の人事のしくみ一つひとつを主体的に運用していくことを促せるのです。
そのためには、考課者訓練という場の中で、評価の付け方・面談のしかたといった知識やノウハウを共有するのみならず、それらを実践する立場として何を感じ何を考えているか、具体的に対話の時間を設ける、ということが必要です。
評価の注意点解説
いわゆる「ハロー効果」や「中心化傾向」といった人事評価のエラーを防ぐために、評価を行う際に意識するポイントを学びます。公正な評価を実現するためのやり方やポイントを確認します。
また、目標管理制度を導入している場合は、期末に評価がしにくいような曖昧な目標ではなく、出来たか出来てないかがハッキリするような目標設定のポイントを解説やワークを通して学びます。
評価の共有
評価者の評価の基準の目線合わせを行います。ワークを通して会社に実際に起こりそうな架空の行動に対して、評価者各人が評価を行います。なぜその評価項目で評価するのか、なぜその評価点数なのか、といったことを考えながらワークを行い、評価者によりバラツキが生じた部分を中心に対話をしながら他者との異なりを実感し、それぞれの考え方、価値観を共有します。最終的に会社の理念や文化に合った行動かどうかを鑑みた上で、会社としての評価を考えていきます。
対話の場
現在、運用している人事制度に対して、感じている事や疑問に思う事、こう変えればもっと良くなると思う事など、自社の人事制度に関して話し合う場を設けます。この対話の場には、評価者だけでなく、改善意識、課題意識を持っている一般社員も参加「可」とすることもあります。評価する側だけでなく、評価される一般社員も参加、という形にすることで、「どうすればより良い評価制度になるのか」「どうすればより良い組織をつくれるのか」と会社全体として“自分ごと”で語る場を設けることが目的です。
この場で「対話して終わり」ではなく、出てきた課題に対して、必要に応じてプロジェクトを立ち上げて、会議を重ねながら実際の運用まで持っていきます。
なお、評価制度のすべてを見直すのではなく、現場で表出している課題を踏まえ、どの点について話し合っていくのか、プロジェクトの枠組みは社長および人事部で決めていき、それを踏まえた話し合いを通して出てきた意見・考えをまた次の期の評価や新たなしくみづくりに活かしていく、という形で人事制度に反映していきます。
人事制度は、会社の方向性や価値観を組織全体に伝えるスベであり、同時に、社員一人ひとりが日常の仕事を通して感じていることや目指したいことなどの”声”を明らかにし、自社の前進を支える文化を醸成する手段でもあります。考課者訓練の機会を活かして、人事制度を他人事から自分ごとへ、そして自分たちごとへと変容させていくプロセスを描いていくと自律的な組織になっていくきっかけにもなります。そして、組織の発達段階にあわせ、見直しを繰り返しながら、さまざまな外部環境の変化にもしなやかに対応する組織の枠組みを創りあげていくことができるのではないでしょうか。
考課者研修プログラム例(2〜3時間)
- はじめに(研修実施の目的)
- 自社の評価制度の概要説明
- 評価時の注意点解説
- 実際の評価をしてみよう(評価ワーク)
- 評価制度、人事制度に対して感じていること、今後に向けての対話
- まとめ