現場力を高め対話の習慣を根付かせる
自律分散な組織運営を行なう上で、柱となるのが「クレド」です。私たちは「ES経営の視点を取り入れたクレド」ということでESクレドと言っています。
ESクレドとは、経営理念を実現するために必要な共通の価値観を、わかりやすい言葉で表したもの。組織の一員として大切にしたい行動のよりどころ・判断基準となる考えかたを言葉でまとめたものです。
そして、小さなカードにまとめてメンバー全員が携帯し、朝礼や会議の場で読み合わせを行ったり、クレドの内容に関連する取り組みを社内で実行します。
職場も一つのコミュニティ、という考えに基づき、雇用されているか否かに関わらず、業務委託で働くメンバーや副業で働くメンバーも含めてクレドを大切に仕事をしていく状態をつくります。
ESクレド導入の流れ
(ESクレド導入事例はこちら)
クレド導入に際しては、以下の要領で、全社員による作文提出を経て、プロジェクトメンバーを中心に作成が進められます。
Step1 自分自身と向き合う
自分自身の人生やキャリアを振り返りながら、「仕事を通した成功体験記」という作文にまとめる。
Step2 価値観を共有する
全社員の成功体験記をプロジェクトメンバーで読み合わせ、特に共感するキーワードを抽出していきます。
Step3 共感するキーワードを言葉にまとめる
抽出したキーワードをフセンと模造紙で整理していきます。
Step4 クレドの文章として仕上げる
対話を重ねながら、キーワードのグループの言葉の数々の背景にあるエピソードや意味を考え、文章にまとめていきます。クレドの意味を皆で共有するクレド発表会を開催し、自分たちが書いた成功体験記からクレドが生まれたということを伝え、自分ごとで捉えてもらいます。
このようなプロセスを経て、だいたい6か月から一年くらいかけて作られるのがESクレドです。
当初は、プロジェクトメンバーの中にも、「会社から言われてやっている」「何ができるのか分からないけれど集まっている」といった他人ごと感がどうしても生まれがちですが、プロジェクトミーティングを重ねるごとに、自分たちが思考・議論するプロセスや紡がれた言葉への愛着が生まれ、自分ごと感(当事者意識)が高まっていきます。
そして、クレドが完成する段階には、「わたしたちが作ったクレドをいかに全社で共有するか」というように主語が「わたしたち」へと変化し、「自分たちごと」感を持って取り組むプロジェクトメンバーが増えて来ます。
しかし同時にこの変化は、プロジェクトに携わらない一般の社員との感覚の異なりを生じさせます。そのため、「自分たちごと」感を組織全体へと伝播させるためにも、「広報活動」は大切な動きとなります。
「自分ごと」から「自分たちごと」への変化
プロジェクトメンバーのみに当事者意識が刻まれた状態だと、クレドづくりに関わりの無い社員にとっては「プロジェクトで何かをやっているらしいけど自分には関係ない」という無関心状態が続き、溝が深まりがちです。その状態から、まずは「クレドとは果たしてどんなものなのかな」とアンテナを向けてもらうために、クレドづくりの段階から、社内広報を推し進めることが重要です。
そして、クレドが完成した際には全社で発表会を行ない、「効果はよくわからないけど、自分たちにとって大切なものが作られたらしい」「あの時書いた作文が、クレドという形になってこれから活用されるらしい」と、関心を寄せてもらいます。
更に、クレドに関わる施策(朝礼、ありがとうカードなど)を継続することで、「クレドがあると何だか職場が良い状態になる」「クレドを意識して行動すると仲間やお客様に喜んでもらえる」という実感を広めていくことです。
そのような実感や、仕事を通して生まれたエピソードを共有する上で、社内広報活動が重要な役割を果たすのです。
個々の物語りを紡いでゆく ー 物語りクレド
ESの視点を取り入れたクレドの導入においては、その職場で働く一人ひとりが、自身の経験と紐づく物語を作文にしたため、その中の大切な言葉をクレドへと紡ぎあげていきます。
そして、数か月の話し合い期間を経て完成したクレドは、日常で生じる個々の経験と紐づき、物語りが生まれてきます。
職場で共に働く一人ひとりからは、主体としてさまざまな経験が生まれ、それらの経験にはさまざまな意味や意図・背景が流れています。さまざまな経験の主体が「わたし」として物語るエピソードがクレドに紐づき、「わたしたち」のことなのだけれどわたしのことでもある、という感覚で日々の作用を起こすのが「物語りクレド」です。
組織における「クレド」の位置づけ
会社には必ず「経営理念」があります。経営理念とは、「会社が何故この社会に存在するのか」という存在意義をまとめたものですので、すぐに実現できるものではありませんし、非常に抽象的な表現になることもあります。
では、「経営理念」と「クレド」の違いとは?というご質問をいただくことがあります。
それを中長期のスパンで区切って具現化したものが「ビジョン」であり、数値や分かりやすい言葉で表現していきます。
そして「クレド」は、そのようなビジョンを会社の戦略に沿って落とし込んだ「目標」に取り組み達成していくための日々の行動を“支える”もの、という位置づけです。例えば、「お客様からのクレームに対してどのように対応するか」と考える際の判断基準としてクレドを活用したり、採用や育成に際して、「このような行動をできればうちの会社の社員にふさわしい」といった行動基準ともなったりするわけです。
ですから、「経営理念」=「クレド」ではなく、クレドの実践を積み重ねることによって、ビジョン・経営理念の実現に近づいていく、というわけです。
私どもがクレドを作成する際は、上記のように必ず「社員参画」型のプロジェクト形式で行います。
そのため、クレドが完成した際に、「会社から与えられたもの」という受け身な感覚ではなく、「自分たちで創り上げたもの」というこだわりや愛着が生まれ、“自分ごと”としてクレドの実践策を考える土壌が出来上がります。
ですから、クレドは、「いかに良い内容の文章にするか」ではなく「いかにクレドの実践に対して参画意識をもつか」ということが重要であり、クレドの作成・実践プロセスそのものに意味があると言えます。
用語解説
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